Dream Japan


"The Art- Mao Asada!" - ("ジ・アート” - 浅田真央!)"
(2014/2/23) -  "искусство(イスクーストヴァ)"
  

2014年2月21日、ソチ五輪の舞台でフィギアスケート女子シングルの決勝が行われた。金メダルに輝いたのは、ジュニア時代から約10年にわたるライバルとして日韓、そして世界の注目を集めたキム・ヨナと浅田真央ではなく、地元ロシアに史上初の金をもたらせたアデリナ・ソトニコアだったが、最も感動を与えたのは、浅田真央の渾身の演技だったといっても過言ではない。
 
8トリプルの美しい舞いもさることながら、感動的で、芸術的な演技で、正に”Art(アート)”を我々に魅せ、多くの人が涙したことであろう。
  
「一番じゃなければ意味がない」、「なぜ二番では駄目か?」・・・など様々な論議が飛び交っていた昨今の日本国民の中で、浅田真央のこの日の演技がフィギアスケートというスポーツのルールの上で何番であろうと、批判する人はいなかったであろう。
 
演技が終わった瞬間に込み上げた浅田真央の涙は、亡き母に捧げたものかも知れないし、演技後に「少しは恩返しが出来た」と言っていたように、家族やお世話になった人たちや、応援してくれたファンへの想いが反映されたものかも知れないが、ファンである我々がむしろ、「ありがとう」といいたくなる程、感動的な"芸術"、"искусство(イスクーストヴァ、芸術のロシア語)"だった。
  
順位としては6位で、鈴木明子や村上佳菜子も同じくベストを尽くしたものの8位と12位に終わり、本人たちはいささか悔しいかったかも知れないし、残念ではあるが、それが何だというのであろうか?
不調に陥っても、全力を尽くし、ばん回し、美しい演技で多くの人を魅了するという見事なドラマをみせてくれたではないか。
 
確かにこのご時世で国民の血税を助成金に使ってまで結果が残せないアスリートたちは何なのか?といった議論も五輪開催期間中にあり、元アスリートだった為末氏などもそれは酷だ、と発言してひと騒動になっており、ショートプログラムが終わった時点で浅田真央のメンタル面の課題を指摘する声もあったが、全てが吹っ切れたように、全ての人を虜(とりこ)にした。
  
これだけメディアに騒がれたら落ち着いた演技もできないだろう、という位、試合前には連日連夜、各国の報道陣が押しかけ、浅田真央は真摯に対応をしていたが、一方のキム・ヨナは騒動を回避するように団体戦に出ずに、3日前にソチに到着するなどの戦術をとった。
  
試合後、浅田真央は笑顔になり、キム・ヨナも「彼女がいたから今の私がある」「もう競争もなくなる」と語り、引退宣言もしたが、韓国ではファン、韓国スケート連盟は銀メダルの採点を疑問視し、ISU(国際スケート連盟)は規定と手順に則り、正当に行われたとコメントをした。
 
素人にとってフィギアのルールは、ボルトの脅威のスピードが一目瞭然な100m競争や、サッカーのゴールの明快さと異なり、基準がわかりにくいし、スキージャンプも、一番遠くに飛んでも優勝しなかったり、迫真の滑りをみせた上村愛子が4位だったりするのはよく分からないのも確かで、特に冬の五輪は審査員の判断という公平性を図りにくい客観基準が加わることも多いようだが、スポーツとして捉えれば、ルールを理解し、それを学んだ中で少なくともアスリートはアクションをしている筈であるから、それを最大限活かすように日々精進してきた結果が出たことは止むを得ない部分もあろう。
  
そして、キム・ヨナの特に一日目のショートでの演技には感嘆させられたし、才能に溢れる選手であることは一目瞭然であったことも付記しておこう。
 
浅田真央の4年後は「想像できていない」とのことだが、多くの人たちが順位だけにとらわれず、彼女の美しい滑りをもう一度、みたいとおもっているのも確かであろうし、次はソトニコア、リプニツカヤらのロシア勢に、アメリカのゴールドやワグナー、台頭する新星たちらが新たなライバルになるであろう。
 
まずはゆっくり休んで、もう一度、ベストの演技を五輪の舞台で魅せようとおもう気持ちが高まれば、ぜひ、華麗で、芸術的な浅田真央の演技をみせてほしいものである。
 
「参加することに意義がある」- 五輪の父であるクーベルタン伯爵は参加者をそうねぎらった。その有名な言葉は多くの選手、観衆を納得させるものであることを大会の終了とともに、実に痛感するものである。


 
***********************************************************************

◆"State-of-the-Art Point":


  "The Art " -  "искусство(イスクーストヴァ)"
 
羽生結弦(はにゅうゆずる)の金メダルは日本国民を安堵させたし、同じ被災地仙台の先輩、イナバウアーで金を獲得した荒川静香以来のフィギア金をもたらせた。次の五輪でも連覇の期待がかかる19歳で、故障で惜しくも出場出来なかった憧れのロシアの英雄、プルシェンコの面前で、世代交代を印象づけた。
  
銀メダルには、スノーボードパラレルの竹内 智香、スキージャンプラージヒルの葛西 紀明、ノルディック複合ノーマルヒルの渡部 暁斗、そして銅メダルにはスノーボード女子ハーフパイプの小野塚 彩那、スノーボード男子ハーフパイプの平岡 卓、ジャンプ男子団体ラージヒルチームらが輝き、日本の総メダル数は、計8個(金1、銀4、銅3)となり、1992年フランスのアルベールビル大会を上回って、冬季五輪で歴代2位になった。歴代最多は98年長野大会の10個(金5、銀1、銅4)である。
  
羽生は280.09(101.45、178.64)とショートでもフリーでもトップの結果を残したが、日本は男子での金メダルは実に史上初のことであった。これまで男子は高橋大輔の銅メダルが最高であったのであるから、快挙であるし、不可能が可能となった。
  
一方、女子の中で、女子フィギアというスポーツは人気もあり、各国での競技者数も多いが、採点の数値だけでみると、以下のような順位になる。
  
・ショートプログラム
1位   キム・ヨナ     韓国    74.92
2位   アデリナ・ソトニコワ ロシア   74.64
3位   カロリーナ・コストナー イタリア 74.12
・・・
16位  浅田真央     日本    55.51
  
・フリースケーティング
1位  アデリナ・ソトニコワ ロシア     149.95
2位  キム・ヨナ 韓国 144.19
3位  浅田真央     日本     142.71
4位  カロリーナ・コストナー イタリア    142.61
  
■トータル・スコア
1位   アデリナ・ソトニコワ ロシア     224.59(74.64、149.95)
2位  キム・ヨナ     韓国 219.11(74.92、144.19)
3位  カロリーナ・コストナー イタリア 216.73(74.12、142.61)
4位  グレイシー・ゴールド 米国     205.53(68.63、136.90)
5位  ユリア・リプニツカヤ ロシア 200.57(65.23、135.34)
6位   浅田真央 日本     198.22(55.51、142.71)
・・・
  
  
結果的にはソトニコワ、キム・ヨナ、コストナーらが浅田真央と上位を争っていたということになる。
 
浅田は明らかに、ショートの不調が響いたが、今回、ソトニコワ、リプニツカヤのロシア勢は地元で地の利を活かして躍進したが、次回は韓国の平昌(ピョンチャン)が会場である。
 
また、浅田にとっての朗報は、今回3位になった世界ランキング1位のコストナーは今がキャリアのピークの状態であり27歳で、4年後に27歳になる浅田真央にとっては、年齢的な心配はない。
  
ちなみに五輪前のロンドンでの世界選手権では、キム・ヨナ、コストナー、浅田が上位1~3位であり、2014年はさいたまでの開催が決まっている。
 
キム・ヨナが引退となると、コストナーも次回は31歳になるため再出場はしない意向ではあり、浅田真央は再出場すれば円熟期の演技をみせることができるかも知れない。
 
出ないという選択肢もあるものの、もっと最高の演技ができると思えるのであればぜひ次回も五輪を目指してもらい、今までのライバルとは異なり、17歳ソトニコア、18歳ゴールド、15歳リプニツカヤらや、新星たちらと上位を争う構図になるであろう4年後に備えてほしい。
 
コストナーの前回カナダのバンクーバー大会の順位は16位で今回の浅田と同じく不調であったが、見事に今回はばん回した。
 
自己ベストの142.71というフリーの記録を見る限り、ふだん着の演技ができれば、浅田は次回のピョンチャンでこそ、成熟した演技ができるかも知れない。
  
もう8年も前になるが、2006年トリノ五輪金メダリストの荒川のトータルスコアは191.34、SP66.02、FS125.32であった。
 
そう、浅田の今回のスコアはそれを凌ぐ好成績であり、トータルスコアの自己ベストは、2013年GP NHK杯の207.59である。
  
日本人の特徴や伝統が活かせる競技かというと、そうであり、男女ともに高いレベルにあることは確かで、逆に不得意な分野で頑張っての入賞や3位という過酷な競争とは違い、金メダルに手が届く分野でもあるため、ぜひ、これからも浅田や羽生をはじめとするアスリート達には切磋琢磨してもらいたいものである。
 
競技としての順位争いのプレッシャー、とりわけキム・ヨナとの関係性もあったであろうが、浅田真央がソチの舞台でみせたものは、Athlete(アスリート)としての演技だけでなく、間違いなく、"Artist(アーティスト)"としての演技だったことを多くの歴史の証人が目撃した。
  
ソチ以降も、ハイレベルで群雄割拠の女子フィギアスケート界にとって、新たな歴史がはじまろうとしており、新たな勝者のみならず、新たな"芸術"で、次回も魅せられたいものである。

    
  

ソチ五輪2014


 
 

本件に関するお問い合わせは、インターアーツ mail@interarts.info まで