Dream Japan

vol.13:
"Dreamers' 110 pitch"
   - Celebration of coming New Baseball Season 2012!

"夢追い人の110球" - 祝2012年球春到来!

(2012/4/24)

2012年4月9日、レンジャース・ボールパーク・イン・アーリントンにてまた一人、日本人メジャーリーガーが足跡を残した。

ダルビッシュ有投手だ!

テキサス・レンジャースに史上最高額の5170万ドル(約40億3300万円)で入札され、6年契約6000万ドル(約46億円)で入団した。日本では実動7年で5年連続防御率1点台、通算1.99の防御率、MVP1度、最多奪三振3度、93勝38敗という秀逸の記録を残して遂にメジャー入りした。父はイランの元サッカー選手で、国際Aマッチ109得点の世界記録保持者アリ・ダエイ、バイエルンやシャルケでも活躍したアジア最優秀選手受賞のアリ・カリミらを輩出した国だ。

テキサス・レンジャースには、前人未到の5714奪三振を達成したノーラン・ライアン、ヤンキース、マリナーズでも一時代を築いた600本塁打超の"A-ROD"(エー・ロッド)こと、アレックス・ロドリゲス、強肩強打の名捕手イバン・ロドリゲス、史上初の"40-40"(40本塁打40盗塁)を達成した黄金期のA'sやヤンキース、レッドソックスらでも活躍したホセ・カンセコ、最後のシーズンに在籍したサミー・ソーサ、91年首位打者、メジャー最年長本塁打を48歳254日で打ち、日本でも活躍したフリオ・フランコ、スイッチ・ヒッター歴代6位の306本塁打でヤンキースらでも活躍したルーベン・シエラ、テキサス時代にシーズン32本塁打を放ち、日本でもヤクルトで42本塁打でタイトルを獲り、阪神にも在籍したが、巨人の斉藤雅樹投手を大の苦手とした「ワニ男」ラリー・パリッシュら名だたる選手が在籍した。

また、1941年以来メジャーで4割を打った選手が出ていないが、そのメジャー史上に残る13人の4割打者の一人であるテッド・ウイリアムスと千葉ロッテ・マリーンズを一躍人気チームにしたボビー・バレンタインが監督としてのキャリアをスタートさせたのもレンジャースである。以前は荒っぽい打棒を振るわせるチームだったが、昨年まで2年連続Wシリーズ準優勝で、球団史上初のメジャー・リーグ制覇にあと一歩まで来ている近年の強豪チームだ。

松坂大輔が108勝60敗、日本通算防御率2.95でメジャー入りし、初年度に15勝したが、それ以来の15勝以上が期待されている。(野茂は初年度13勝で新人王も獲得した。)

ダルビッシュは、震災の影響のあった東北高校出身で、高校2年の夏には決勝で常総学院に敗れて準優勝、3年春の熊本工業高校戦では史上12度目のノーヒットノーランを達成して日本ハムファイターズに入団。

入団直後は精神的にもまだ若く、謹慎事件などもあったが、2006年は北海道へ移転したチームで12勝でエースになり、44年ぶりの日本一に輝いた。長嶋さんの立教大学の先輩でもある故大沢親分(元日ハム監督)が車の上からでなく、何と沿道でファンと同じ目線から拍手喝采していた光景は強く印象に残っている。その年のアジアシリーズでも台湾代表のLa Newベアーズとの決勝で勝ち投手となり、アジア制覇すると共にシリーズMVPも受賞した。

輝かしいキャリアの中でも特に印象深いのは、2009年の第2回WBC(ワールドベースボールクラシック)で急遽、先発から抑えに転向し、決勝の韓国戦で勝利投手になったことであろう。

その彼がボールパーク・イン・アーリントンでメジャー初登板の舞台にたった4月9日(日本時間10日)、イチローが3安打、川崎もヒットを放つなどで5回2/3、8安打、自責点5、奪三振5、四死球5の大乱調デビューではあったが、ハミルトン、ベルトレ、マイケル・ヤング、クルーズ、キンスラーら強力打撃陣の援護でメジャー初登板初勝利をあげた。

それより1週間以上前の3月30日、ダルビッシュの抜けた日ハム投手陣を"背負って"プロ初の開幕投手として4年ぶりにチームに開幕勝利をもたらせたのが、斉藤佑樹投手であった。

「持ってる男」は人気先行の人事などともいわれ、3年連続2桁勝利で実績を積んできた武田勝という順当な開幕投手候補ではなく、栗山監督が斉藤を大抜擢したため武田投手に「謝った」とも言っていたが、斉藤に敢えて開幕で投げさせることでダルビッシュ不在のチームの不安を払拭し、勢いをつける、という意図に見事に結果で答えた。

マリナーズのイチローは3月28日に日本の東京ドームで行われたメジャー開幕戦で5打数4安打1打点の活躍をみせ、翌29日はアスレチックスがキューバからメジャーにやってきたセスペデスの逆転のメジャー初本塁打で勝ち、イチローにヒットこそでなかったものの守備で魅せ、レーザー・ビームと言われる強肩で三塁走者をホームに返させない好返球をみせた。

そして4月9日には、日本でのメジャー開幕シリーズ第2戦でイチローにヒットを打たせなかった元サイヤング賞投手コローンから川崎宗則もメジャー初ヒット初打点を記録した。

ブリュワーズの青木宜親は1日早い同8日のカージナルスとのミラーパークでの一戦でレフト前にプロ初ヒットを決めた。昨季ナリーグMVPの30-30達成のライアン・ブラウン、強打者コーリー・ハートがその日に本塁打を打ち、2011年に3割を打ったナイジャー・モーガンもヒットを放つなど外野陣は全員活躍し、青木は完全にレギュラーを得ていないが、特徴である粘り強い打撃はみせているだけに重宝されるであろう。

岩隈も、20日にようやく夢であったメジャーデビューし、途中出場で4回1安打1失点の上々のデビューを飾った。

一方、日本のプロ野球では、新星球団横浜DeNAベイスターズを率いてシーズン前の話題を最もさらった中畑清監督と、阪神の和田豊新監督が開幕では5-5の死闘をみせて、それぞれ、翌31日は阪神、その次の4月1日は横浜が待望の初勝利をあげた。

前年王者、ソフトバンクでは、日本シリーズMVPの小久保の2000本安打挑戦も注目されるが、内川が4月21日に5打数5安打し、松田、新戦力ペーニャらも好調で、早くも上位争いをしており、何と言っても新垣投手が4月1日、約3年ぶり、実に1273日ぶりの涙の勝利を手にした。

2011年セリーグ王者、中日では4月15日に第2次政権となる高木監督が指名した山本昌投手が46歳8ヶ月と4日でのプロ野球史上最年長勝利と、杉下茂氏の球団記録に並ぶ211勝をあげた。

ヤクルトでは、石川雅規投手が開幕戦で球史に"記憶"を残したことであろう。ヤクルトのエース、5年連続の開幕投手でありながら、過去3年で開幕3連敗中だったが、史上初の開幕戦ノーヒットノーランかというほどの快投をみせ、9回1死に坂本勇人選手がサード強襲ヒットを放つまで、巨人の重量打線を無安打に抑えて勝利投手となった。2000本安打を目指すヤクルトのベテラン宮本選手も活躍した。

大型補強といわれたジャイアンツは元気なく、澤村投手の1安打完封に宮国のプロ初勝利などはあったが、4月24日現在、打線が絶不調だ。ベテラン谷の2番起用でチームが線としてつながったように見えたが、その谷が故障し、またチームとして機能していない。原巨人vs中畑横浜として注目を浴びた一戦で、新潟では、横浜に延長11回に中村紀選手のサヨナラ本塁打で3-1で中畑横浜の主催試合初勝利をプレゼントし、6年ぶりの単独最下位にもなっている。(横浜DeNAの地元横浜球場での勝利は4月20日の阪神戦で、同じ3-1のスコア)

広島の圧巻は、前田健太投手のノーヒットノーランを4月6日の横浜DeNA戦で達成し、74人目のノーヒッター達成者になったことであろう。ルーキー野村のプロ初勝利をはじめ、近年獲得のドラフト1位投手が多数1軍に在籍し、チーム力もあがってきている。

栗山新監督の日ハムは、2番打者としてスタートした2000本安打挑戦のかかったシーズンの稲葉が好調でリーグの首位打者にたつなど、チームを牽引し、田中、陽、金子が3割台と好調だ!

西武も岸が開幕3試合で防御率1.77と好調なものの、エース涌井は2軍落ちし、おかわり君中村は1割台と投打がかみあっていない。

オリックスは主砲T-岡田が3割以上をキープしたり、21日に韓国三冠王の李大浩が待望の1号をあげたがチーム全体としてはまだ勢いがない。

楽天は4月13日にエース田中が斉藤との2度目のプロでの対決で12奪三振で2度目の勝利をはたしたが、チームは下位に沈んでいる。

千葉ロッテは井口、サブローらベテランがチームを牽引し、新人藤岡が4月1日の楽天戦にプロ初勝利と開幕ダッシュには成功した。

いずれにしても20試合前後を通過したプロ野球で開幕ダッシュに成功したチームとそうでないチームがあるが、最後の10月、11月に笑っているチームがどこか、改善点を早期に見出し、対応できたチームこそが、真のペナントの覇者となるであろう。

斉藤は4月20日にプロ初完封、まだ早いがハーラートップの3勝目もあげ勢いにのった。中畑横浜も同日に横浜での勝利で勢いづき、翌日も連勝と人気に見合う結果を介間みせた。

はたして斉藤は真のエースとして成長するであろうか?プロ野球中継の各テレビ局の地上波放送数も、彼ら人気者の活躍にかかっているといっても過言ではない。

ダルビッシュもメジャーで通算324勝投手、レンジャース球団社長ライアンのようなスーパー・エースになり得るか。

その二人の夢追い人が"開幕戦初先発初完投"と、"メジャー初先発初勝利"に費やした球数がくしくも同じ110球であった。

それぞれの"夢追い人"たちの作り出す、筋書きのないドラマに今年も注目したいものである!


◆"State-of-the-Art Point":

ダルビッシュがどこまで通用するか?日本のプロ野球界の誇る圧倒的なトップアスリートとしてはおそらくイチロー、松井、松坂以来の期待がもたれているであろうし、野茂の13勝、松坂の15勝を凌ぐか?、という点にも注目が集まる。

チームとしては、恵まれている。ワシントン監督は温厚で、選手の個性を活かす采配で、これまでも私生活に課題のあった主砲ハミルトンやオガンド投手などのポテンシャルを評価し、野球に集中させて好成績を残してきた。

長年メジャーをみているが、ここまでレンジャースが強いのを歴史的に見たことはなく、今年優勝、悲願のWシリーズ初制覇が達成されれば、"史上最強チーム"といっても過言でないだろう。

ダルビッシュとの肝心の"相棒"、バッテリーとしては、ナポリという3割30本を打つ強打の捕手よりも、ベネズエラ代表捕手トレアルバとの3戦目での初コンビで、タイガースの主砲ミゲル・カブレラ、プリンス・フィルダー(日本の阪神タイガースでも活躍したセシル・フィルダーの息子)らを見事に抑えた投球が素晴らしかった。

それまでは変化球を狙われていたかのように安打を多く打たれていたが、直球主体でありながら、緩急をつけて見事に打者を打ち取っていた。6回3分の2、被安打2、5奪三振でチームの7連勝に貢献した。

(その後ヤンキース戦で日本時間4月25日に黒田投手と投げあい、9回1死まで10奪三振、無失点で2-0で勝利した。)

但し、21日のシアトルでは、ホワイトソックスのフィリップ・ハンバー投手がマリナーズのイチロー、川崎が出場する中で、ハラデー(現フィリーズ)以来の"完全試合"を達成するなど、メジャーのレベルは高い。

アリーグには、サイヤング賞投手、バーランダー(タイガース)や、サバシア(ヤンキース)、ハリソン(レンジャース)、C.ウィルソン(エンジェルス)ら好投手がいるし、黒田、松坂、上原、高橋尚、岩隈、和田、建山、田沢ら日本人投手も在籍している。

レンジャースには、324勝、5714三振のライアン社長と、355勝、20年連続2桁勝利、17年連続15勝以上の"精密機械"と言われたグレッグ・マダックスの兄、マイク・マダックス投手コーチなどもおり、バックアッパーには恵まれている。

さらにリハビリコーチには、元巨人のスクリューボールで有名だったあの、キース・カムストックもいる。

夏には40度を超えるテキサスは打者有利といわれているが、ダルビッシュが一定の結果を示すことで、日本人選手全体の世界での評価も再び上ってほしいものである!松井秀喜という稀代のクラッチ・ヒッターも必要なチームが必ずある筈だ!4月24日には、2011年アリーグ東地区2位の強豪で、かつて岩村(現東北楽天)らも在籍したタンパベイ・レイズが獲得に乗り出したと、CBCはじめ、複数のメディアが報じた。

CBC Sports : Rays 'expected' to sign Hideki Matsui

一方の斉藤は、日米の違いこそあれ、3勝を早くも4月に達成するなど、チームの好調を牽引しているし、監督はおろか、コーチ経験すらなかった栗山監督を大抜擢をした日ハムの野球に対する情熱と人選は、これまでは順調に実っており、敬意を表するに値するであろう。

引退後、苦節20年で念願の監督になった中畑清監督と、80年代の日本一を達成した原監督との対戦を観るのは選手時代を知るものにとっては感慨深いものもあり、まだチームに安定感がない両チームだが、注目していきたいものである。おそらく当時はテレビ中継も多く、多くのファンがスタメン選手の名前を言えたことであろう。篠塚、松本、吉村、原、クロマティ、中畑、河埜、山倉・・・当時の選手には個性もスター性もあった。

さいごに2012年の球春到来を楽しみつつ、ひとつの記憶を思い起こしたい。

206勝193セーブの大投手、江夏豊氏である。

日本でシーズン25勝を達成し、401奪三振、オールスターで9連続奪三振という前人未踏の大記録も残した。

阪神では王、長嶋のライバルとして君臨し、南海で野村監督と"リリーフ"として一時代を築き、広島では球史に残る故山際淳司氏の名作でもある「江夏の21球」等で2年連続の日本一、そして日ハムでは大沢親分の元、大ストッパーとしてチームの最後を締めくくりパリーグ制覇も達成し、最後に西武で日本でのキャリアを終えた大投手だ。阪神のイメージが強いが、巨人、東映(現日ハム)、阪急(現オリックス)がドラフト1位指名して結果的に阪神が抽選に勝ち、交渉権を得たことはさほど知られていない。

青木の在籍するミルウォーキー・ブリュワーズには、ライアン・ブラウンと言うスターもいるが、江夏が最後の舞台に求めたのが、メジャー、そのブリュワーズのユニフォームだった。

往年のピッチングができないまでも、スプリング・キャンプに参加し、楽しそうに投げる姿に残り7セーブにまで迫った、日本人史上初の"200勝200セーブ"をひょっとしたら、海の向こうで達成してくれるのでは?という期待すら、抱かせた。

晩年の江夏にその力はなく、結果は伴わなかったが、最後に1野球人としてのロマンと、"夢"を感じた。

"侍"の中でも特に"野武士"のような人であったが、圧倒的な個性も、何より実力も、あった。

江夏のシーズン401奪三振は、レンジャース球団社長ノーラン・ライアンの383をも上回る大記録だった。

夢追い人たちの美学と新たな挑戦は楽しみであるが、日ハムの先輩、"江夏の夢"も重なるダルビッシュの投球や、同じく今期の初戦で110球を投げた斉藤をはじめとした現役選手の覚醒、成長を見守り、応援していきたいものである。