Dream Japan

Vol.23:
"Destiny Draft 2013" - "No Line on the Horizon"

運命のドラフト - "No Line on the Horizon"

(2013/10/26)

運命のドラフトが今年も開催された。

2013年は、"赤ヘル"(赤とエンジ)系球団が人気選手の重複指名での優先交渉権を勝ちとることとなった。

昨年の日ハム大谷、巨人菅野のような大きな話題にはならない比較的、ノーマルな状態でのドラフトとなった今年は、まずは中日、DeNA、楽天、ソフトバンク、日ハムの5球団が重複指名した桐光学園高松井裕樹投手を、東北楽天が射止めた。2年生の夏の甲子園、対今治西高校戦で大会史上最多の10連続奪三振と1試合22奪三振の記録を作ったドクターKであるが、3年での甲子園出場は叶わなかった。田中、則本以外の先発の柱が手薄で、各位が3番手を争う状態にあるだけに、楽天で1年目からチャンスをもらえるだろう。

この時期に何かと話題をもたらせてきた日ハムは今年は運に見放され、その後の抽選でも柿田、岩貞を外したが、最後に走攻守3拍子揃った高校生の中でも評価の高かった茨木出身の東海大甲府高内野手、渡辺諒(りょう)選手を指名した。

また、同じ元祖”赤ヘル”、広島が、大学生No.1右腕の呼び声の高かった九州共立大の大瀬良大地投手を阪神、ヤクルトとの競合の結果、くじ引きで優先交渉権を獲得した。

日米大学野球でもアメリカ打線をバッタバッタと三振に切る最速153km/hの豪腕投手で、松井より即戦力ではないかとの評価もドラフト前はあったが、3球団の競合、さらにその中でも5年間、ずっと裏方として彼を見続け、追い続けた田村スカウトがくじを引き当てた。大瀬良、田村さんにとってもハイライトとなったに違いない。広島は2013年は前健を筆頭に4投手が10勝以上を挙げ、3位に躍進したが、また強力な投手を手に入れることとなった。ちなみに身長は松井は174cmで、大瀬良は187cm、大卒で2013年16勝でセ・リーグ最多勝をとったライアン小川は171cmだ。

ジャイアンツは千葉ロッテとの”黒ヘル”同士の2球団競合でしなやかな投球フォームの東京ガスの石川歩投手を選択したが、当日まで、松井、石川、小林、大瀬良の4人から選ぶ、という報道もあった中で、最後の最後に石川を選択したが、ロッテ伊東監督がくじを引き当て、結果巨人は、”トップ4”の候補だった日本生命小林誠司捕手を1位指名した。

日生は”赤ヘル”だが、これが”縁”ということだろう。小林捕手は、広島広陵高時代は広島野村投手と甲子園準優勝、大学時代も同志社大で65年ぶりのリーグ4連覇を支え、NO.1捕手の称号を得ていたが、「1位指名じゃなければ社会人」と決めていたそうで、1~3位までに入る素養はあったが、2年前のドラフトではプロ入りせず、今回のドラフトに至った。発言の真相はまだプロでやっていけるか不安があったそうだが、インサイドワークとスローイングには定評があり、あとは打力だが、広角に打ち分けられるものの非力という評価もあり、阿部という偉大なキャプテンが健在な中で、徐々に課題の打撃力もつけていければ、選手会の会長でもある楽天の嶋のような総合力の高い捕手としてプロレベルの力をつけてレギュラーを獲得できようになるかも知れないし、何より阿部も34歳で足の故障があるだけに一塁併用も想定でき、端正なマスクで人気も得る可能性のある選手だ。

西武は高校屈指の強打者、大阪桐蔭の森友哉捕手を指名した。阪神ファンの泉ピン子さんは、藤浪とのバッテリー復活を期待し、何故阪神は指名しないのか?と怒っていたようだが、170cmとは思えない豪快な打棒を見せるこの選手は西武が一本釣りに成功した。目標は巨人の阿部のような、打てる捕手だということとで、大阪桐蔭のおかわり君中村、今年の打点王、浅村ら先輩と共に、強力打線の一角を担うことが期待される。

オリックスは、1位指名くじ引き11連敗中だったが、今回はスリークオーターに投げ方を変更してから急成長したJR東日本の吉田一将捕手を一本釣りした。

阪神は熊本出身の横浜商科大のドクターK、左腕岩貞祐太投手を大瀬良、柿田の抽選の後に1位指名した。

中日は谷繁新監督が気に入ったという聖隷クリストファー高の鈴木翔太投手を指名、静岡No.1と言われる伸びのあるストレートとフォークが特徴の投手だ。

横浜DeNAは日本生命で巨人の1位小林とバッテリーを組んだ柿田裕太投手を阪神、日ハムとのくじ引きで勝ちとった。

東京ヤクルトは北海道出身、國學院大の杉浦稔大投手を指名した。

ソフトバンクホークスは松井の後にヤクルトとの抽選で杉浦を外した後、JR九州の152km/h右腕、加治屋蓮投手を指名した。

以上が各チームの1位指名の状況だが、近年のドラフトの台風の目だった日ハムがくじを3度外したこと、また大瀬良よりも松井を選んだことが意外だった。ウルフ、ケッペルら3番手以降が機能しなかった今年、吉川、木佐貫以外が規定投球回数未満でローテを1年守れなかったが、その年の一番の評価の選手が松井ということだったのだろうが、160km/hを投げる右腕、大谷を来季は投手中心で回すということの想定もあるのだろうか。


◆"State-of-the-Art Point":

ドラフトは選手のプロとしてのスタート地点が決まる運命の瞬間であるだけに、やはり非常に興味深いものではある。

一方で、大谷、菅野、藤浪、東浜らが騒がれた昨年のドラフトだが、大活躍をみせたのは、楽天2位、三重中京大の則本、ヤクルト2位の創価大ライアン小川であり、順位に大きな差はなく、横一線、まだ現時点では、成長の可能性に限界点はないといえる。

それでは、各チームのドラフト指名選手をみていくことにしよう。

◆2013 ドラフト会議順位

◎は抽選により交渉権獲得

セントラル・リーグ

巨人
1位1回目石川 歩(東京ガス、投手、右右)
1位小林 誠司(日本生命、捕手、右右)
2位和田 恋(高知、内野手、右右)
3位田口 麗斗(広島新庄、投手、左左)
4位奥村 展征(日大山形、内野手、右左)
5位平良拳太郎(北山、投手、右右)
育成1位青山 誠(日大、外野手、右右)
育成2位長江 翔太(大経大、投手、右左)
育成3位北之園隆生(秀岳館、投手、右左)

巨人は足に故障を抱えるベテラン阿部の数年後を想定し、守備力の高い小林捕手を1位で獲得。昨年も大累、坂口、松冨ら内野手を獲得したが、今年も高校55本塁打の和田、日大三、作新、明徳義塾をことごとく倒し、日大山形を4強に導いた4番で日本代表の奥村を獲得した。

3位田口は西で左腕No.1評価があり、5位平良は沖縄の掘り出しものになるか、育成の2位長江はトライアウトからの獲得だ。

阪神
1位1回目大瀬良大地(九州共立大、投手、右右)
1位2回目柿田 裕太(日本生命、投手、右右)
1位岩貞 祐太(横浜商大、投手、左左)
2位横田慎太郎(鹿児島実、外野手、左左)
3位陽川 尚将(東農大、内野手、右右)
4位梅野隆太郎(福岡大、捕手、右右)
5位山本 翔也(王子、投手、左左)
6位岩崎 優(国士舘大、投手、左左)

岩貞も横浜らの1位候補といわれていた左腕だ。横田、陽川はパワーヒッターで、梅野も強打の大学日本代表捕手と、パワーに重点を置いたようだ。山本、岩崎も左腕だ。

広島
1位1回目大瀬良大地(九州共立大、投手、右右)◎
1位大瀬良大地(九州共立大、投手、右右))
2位九里 亜蓮(亜大、投手、右右)
3位田中 広輔(JR東日本、内野手、右左)
4位西原 圭大(ニチダイ、投手、右右)
5位中村 祐太(関東一、投手、右右)

大瀬良を取れた事は大きいだろう。前健15勝、野村12勝、大竹10勝、バリントン11勝、と先発4本柱がいて、さらに5本目の柱が期待できる。2位の九里は苦労人だが、父が米国人3A選手で、亜大の東浜の後輩であり、東都のエースだ。高校生は中村だけだが、即戦力を揃え、来季も上位を狙う。

中日
1位1回目松井 裕樹(桐光学園、投手、左左)
1位鈴木 翔太(聖隷クリストファー、投手、右右)
2位又吉 克樹(香川、投手、右右)
3位桂 依央利(大商大、捕手、右右)
4位阿知羅拓馬(JR東日本、投手、右右)
5位祖父江大輔(トヨタ自動車、投手、右左)
6位藤沢 拓斗(西濃運輸、内野手、右左)
育成1位岸本 淳希(敦賀気比、投手、右右)
育成2位橋爪 大佑(大商大、内野手、右両)

1位は高校屈指の右腕、鈴木、2位はアイランドリーグのエース格又吉、その他の投手も阿知羅は豪腕、祖父江は強気の投球、3位の桂は捕手谷繁の英才教育を受けるか。

横浜DeNA
1位1回目松井 裕樹(桐光学園、投手、左左)
1位2回目柿田 裕太(日本生命、投手、右右)◎
2位平田 真吾(Honda熊本、投手、右右)
3位嶺井 博希(亜大、捕手、右両)
4位三上 朋也(JX─ENEOS、投手、右右)
5位関根 大気(東邦、外野手、左左)
6位山下 峻(松本大、投手、左左)
育成1位砂田 毅樹(明桜、投手、左左)
育成2位万谷 康平(ミキハウス、投手、右左)

社会人3年で急成長の柿田を獲ったが、2位の平田も豪腕で期待がもて、4位三上も都市対抗連覇の主軸、ほかにも山下、砂田、万谷と課題の投手を多く獲ったが、エースになる投手が出て欲しいことだろう。俊足強打の関根も楽しみだ。亜大5連覇を支えた嶺井は捕手では珍しいスイッチヒッターだ。

東京ヤクルト
1位1回目大瀬良大地(九州共立大、投手、右右)
1位2回目杉浦 稔大(国学院大、投手、右右)◎)
2位西浦 直亨(法大、内野手、右右)
3位秋吉 亮(パナソニック、投手、右右)
4位岩橋 慶侍(京産大、投手、左左)
5位児山 祐斗(関西、投手、左左)
6位藤井 亮太(シティライト岡山、捕手、右左)

野手っぽさもある杉浦、秋吉、岩橋、児山とクセのある投手をとったが、ライアン小川の成功からか。法大西浦は6大学の2冠王内野手。藤井は俊足、巧打の捕手だ。


パシフィック・リーグ

東北楽天
1位1回目松井 裕樹(桐光学園、投手、左左)◎
2位内田 靖人(常総学院、捕手、右右)
3位浜矢 広大(Honda鈴鹿、投手、左左)
4位古川 侑利(有田工、投手、右右)
5位西宮 悠介(横浜商大、投手、左左)
6位横山 貴明(早大、投手、右右)
7位相原 和友(七十七銀行、投手、左左)
8位相沢 晋(日本製紙石巻、投手、右左)
9位今野 龍太(岩出山、投手、右右)

松井のスライダーがどれ位プロで通用するか、田中のメジャー行きも噂される中、実に8人の投手をとった。2位の内田は常総のパワフルな野手もできる捕手で、昨年のドラフトの下妻捕手らとの次世代捕手争いを予感させる。6位早大の横山は地元福島出身だ。

埼玉西武
1位1回目森 友哉(大阪桐蔭、捕手、右左)
2位山川 穂高(富士大、内野手、右右)
3位豊田 拓矢(TDK、投手、右右)
4位金子 一輝(日大藤沢、内野手、右右)
5位山口 嵩之(トヨタ自動車東日本、投手、右右)
6位岡田 雅利(大阪ガス、捕手、右右)
7位福倉 健太郎(第一工大、投手、右右)

森がどこにいくか、競合かと思いきや、一本釣り。2位の富士大山川もパワーが売りで、本塁打の出やすいと言われる西武球場向きだ。

千葉ロッテ
1位1回目石川 歩(東京ガス、投手、右右)◎
2位吉田 裕太(立正大、捕手、右右)
3位三木 亮(上武大、内野手、右右)
4位吉原 正平(日本生命、投手、右右)
5位井上 晴哉(日本生命、内野手、右右)
6位二木 康太(鹿児島情報、投手、右右
育成1位肘井 竜蔵(北条、捕手、右左)

角度のある投球でシンカーを武器にする石川を獲得。千葉出身吉田は伊東監督に育てられるか。ユーティリティ性の高い三木や、日生の吉原、井上という巨人小林とバッテリーを組んだ投手らも一気に獲得した。

福岡ソフトバンク
1位1回目松井 裕樹(桐光学園、投手、左左)
1位2回目杉浦 稔大(国学院大、投手、右右)
1位加治屋 蓮(JR九州、投手、右右)
2位森 唯斗(三菱自動車倉敷オーシャンズ、投手、右右)
3位岡本 健(新日鉄住金かずさマジック、投手、右右)
4位上林 誠知(仙台育英、外野手、右左)
育成1位石川 柊太(創価大、投手、右右)
育成2位東方 伸友(浜田商、投手、右右)
育成3位曽根 海成(京都国際、内野手、右右)
育成4位張本 優大(佛教大、捕手、右右)

武田翔、東浜らが1本立ちできなかった中で、加治屋、森、岡本と上位3人は社会人からとった。4位上林は仙台のイチローといわれる逸材。育成も4名と多く獲った。

オリックス
1位吉田 一将(JR東日本、投手、右左)
2位東明 大貴(富士重工、投手、右右)
3位若月 健矢(花咲徳栄、捕手、右右)
4位園部 聡(聖光学院、内野手、右右)
5位吉田 雄人(北照、外野手、右左)
6位奥浪 鏡(創志学園、内野手、右右)
7位柴田 健斗(信濃、投手、右右)
8位大山 暁史(セガサミー、投手、左左)
育成1位東 弘明(徳島IL、内野手、右右)

吉田一、東明と社会人の有名投手をとった。若月、園部、吉田雄と高校生も上位でとった。育成からも徳島アイランドリーグの東を獲得。

北海道日本ハム
1位1回目松井 裕樹(桐光学園、投手、左左)
1位2回目柿田 裕太(日本生命、投手、右右)
1位3回目岩貞 祐太(横浜商大、投手、左左)
1位渡辺 諒(東海大甲府、内野手、右右)
2位浦野 博司(セガサミー、投手、右右)
3位岡 大海(明大、内野手、右右)
4位高梨 裕稔(山梨学院大、投手、右右)
5位金平 将至(東海理化、投手、左左)
6位白村 明弘(慶大、投手、右左)
7位岸里 亮佑(花巻東、投手、右左)
8位石川 亮(帝京、捕手、右右)

中田翔を三塁にするプランもあるようだが、渡辺との強打の三遊間も可能性があるのか。明大の岡は大学野球でエースで4番、二刀流も経験したが、倉敷商時代から注目されてきた野球センスも高く、俊足で、大化けする可能性を持っている。大谷の後輩にあたり花巻の岸里も同様に投手も経験した選手だ。投手は即戦力といわれる浦野、高梨、金平、慶応大の6位白村らを一挙にとったが手薄となった投手陣に入りこめるか。8位帝京の石川は鶴岡、大野らの競争激しい中で捕手として成長できるか。


以上、各チームのドラフト交渉権獲得選手である。

メディアでは松井、大瀬良、石川、吉田ら投手に注目が集まったが、捕手が守備力でジャイアンツ入りの小林、打力の西武森、大学日本代表の阪神梅野、東都5連覇の横浜嶺井とアマで実績をあげた選手が多く、千葉ロッテの吉田 裕は長打力、中日桂は首位打者を獲った打撃など、将来性を買われた補強がされており、今後が面白いというのが今年の特徴だ。

2014年に宮崎県で第6回女子野球W杯が開催されることが決まった女子プロ野球でも、走攻守にセンス溢れる六角、伸びのあるストレートが素晴らしく、打撃でも伸びしろが期待できる二刀流の新宮、大学野球の主砲、大山らスター候補が来季からプロ入りする。

しかし、プロ入りはあくまでスタートであり、成長に限界もまだない。

横一線、スタート地点に立った選手たちから、次のイチロー、ガッツ、ライアンらが、そして侍ジャパンの中軸が出てくることを期待したい!


・プロ野球ドラフト会議 2013

・侍ジャパン始動

・運命のドラフト 2012

・"No Line on the Horizon" / U2



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